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調査研究(平成15年度)

小規模事業場における労働衛生管理の進捗状況調査

総   括 埼玉産業保健推進センター 所 長 和田  攻
共同研究者 埼玉産業保健推進センター 相談員 宇佐見 隆廣
    林  文明
    植田 康久
    藤田 寿久
    興原 幸子
協力研究者 獨協医科大学医学情報センター 助教授 木村 一元
総   括 埼玉産業保健推進センター
所 長 和田  攻
共同研究者 埼玉産業保健推進センター
相談員
  • 宇佐見 隆廣
  • 林  文明
  • 飯田 秀晴
  • 植田 康久
  • 藤田 寿久
  • 興原 幸子
協力研究者 獨協医科大学医学情報センター
助教授
  • 木村 一元

I. はじめに

労働衛生管理体制の確立とその活動の活性化,なかでも小規模事業場のそれは,これまで,わが国の産業保健における大きな課題として,幾度となく指摘されてきた。これらのことから,平成12年度に「小規模事業場の労働衛生管理の実態について」の調査を実施し,その果実をもって地域産業保健センターの支援を中心に諸活動の推進を図ってきた。その後3年が経過しており,この間に小規模事業場の産業保健活動がどの程度進捗したか,平成12年度調査と本調査との対比成績から諸活動の推移状況を分析し今後の支援方策を検討することを目的とした。

II. 調査対象と方法

県内の50人未満事業場を無作為抽出法により1,000事業場選定した。本調査は平成12年度調査(以下,前回調査と略す)との対比が「要」となるので,前回調査とほぼ同様のアンケート調査票を作成し,実施方法・時期も前回調査と同様に年明けの1月に事業主宛に郵送法を用いて行った。回答が得られたのは310事業場で,その回収率は約1/3に止まった。集計にあたっては回答時点で50人以上規模となっていた53事業場と欠落が多く無効回答扱いとなった5事業場を除き,252事業場を解析対象とした。両調査成績の比較にあたっては,従業員規模,業種,有害業務などの構成割合が前回調査と大差のないことを確認し,その推移状況を把握した(表1)。また,本調査では前回調査とは別枠で,労働衛生管理活動が3年前に比べ,「現在どの様な状況にあるか」事業主に追加の質問をし,その活動状況を進展事業場群と不変事業場群(進展106事業場,不変143事業場+悪化3事業場)に大別して解析を行った。

III. 結果と考察

1. 事業経営における産業保健の考え方
事業主が職場の健康管理をどの様に考えているか両調査成績を対比してみると,従業員の健康管理を第1と考えて諸活動を実施している事業場が減少傾向を示し,重要性は解っているが時間的・経済的に余裕がない・経済的理由で個人に任せざるを得ない事業場に増加傾向がみられ,両成績の分布に差(p<0.01)がみられた。また,これらを追加設問で把握した進展事業場群と不変事業場群で対比すると,従業員の健康を第1と考える事業場が進展事業場群に,時間的・経済的に余裕がないが不変事業場群に多く,その分布に差(p<0.01)がみられた(表2)。

2. 健康管理と作業環境管理
定期健診の実施と事後措置をみると,実施率(90.8%,両調査の平均値,以下同様に記述),個人通知(61.7%),医師の意見聴取(65.1%),保健指導(30.3%)などについては両調査の頻度に差はみられなかったが,健診データ管理(6.5%:12.8%,p<0.05)の頻度は前回調査に比し本調査に高い傾向が得られた。また,これらを進展事業場群と不変事業場群で比較してみると,医師の意見聴取,保健指導,健診データ管理などの頻度は進展事業場群に高い傾向がみられた(図1)。さらに,就業上の措置をみると,時間外労働の制限(44.4%),労働時間の短縮(41.0%),作業の転換(24.4%)などに頻度の高い傾向をみたが,前回調査:本調査,進展群:不変群ともその頻度に差はみられなかった。 小規模事業場における有害業務として,粉じん,有機溶剤,騒音などに出現率の高い傾向をみたが,特殊健康診断に係る対象業務割合(21.3%)と特殊健康診断の実施率(80.0%)には両調査間で頻度差はみられなかった。また,作業環境測定の実施率(19.7%)や安全衛生推進者の選任率(48.5%)にも両調査間で有意な差はみられなかったが,本調査の推進事業場群と不変事業場群の比較では,作業環境測定,安全衛生推進者選任とも推進事業場群に頻度の高い傾向がみられた(図1)。

IV. 考察

3年前に比べ職場の健康管理は「その重要性は解っているが時間的・経済的余裕がなく,個人に任せざるを得ない」に増加傾向をみたが,小規模事業場がおかれている経営の厳しい今日的状況の反映と解したい。しかし,未だ低頻度ではあったが,「健診データの管理を行っている」に増加傾向がみられたことは,これまでの地域産業保健センターの支援が効を奏してきていると考えたい。健診情報は事業者が適正に就業上の措置を行い,労働者が心身ともに健康に働くために収集される基幹情報で,これを整備するのは容易ではないが,その必要性は重視されなければならない。また,不変事業場群に比べ進展事業場群に良好な成績を得たが,進展事業場群の事業主は,労働衛生管理は経営の根幹で50.0%,生産性を高め35.8%,医療費や病欠の削除28.3%につながるとの考え方を示していた。

V. おわりに

1. 聴覚管理の立ち後れ
小規模事業場が社会経済情勢に対応しながら,労働衛生管理を適切に実施するには,事業者がその意義をよく理解し信念をもって行動することの大切さが示唆された。今後も事業主セミナーなどを重点的に開催し,出席の勧奨と啓発を図りたい。

産業保健情報

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