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調査研究(平成10年度)

熟年労働者のメンタルヘルスに関する調査・研究

主任研究者 埼玉産業保健推進センター 所 長 沖野 哲郎
共同研究者 埼玉産業保健推進センター 相談員 照井 哲
富士ゼロックス(株) 岩槻事業所 産業医 阿久津 昌久
埼玉県産業看護研究会 会 長 興原 幸子
埼玉県立精神保健総合センター 専門調査員 野中 猛
主任研究者 埼玉産業保健推進センター
所 長 沖野 哲郎
共同研究者 埼玉産業保健推進センター
相談員
照井 哲
富士ゼロックス(株) 岩槻事業所
産業医
阿久津 昌久
埼玉県産業看護研究会
会 長
興原 幸子
埼玉県立精神保健総合センター
専門調査員
野中 猛

I. はじめに

昨今の経済事情を反映し、企業内においてリストラの対象とされるなど厳しい立場におかれ、将来に多くの不安を感じていると考えられる熟年労働者のストレス要因・意識等について調査し、産業保健の立場から、この世代に対して、企業において、どのようなメンタルヘルスケアの実施が望まれるかを明らかにすることにより、県内事業場における的確なメンタルヘルスケアの実施に資すること、また併せて企業におけるメンタルヘルスに関するニーズを調査し、今後のセンター運営に資することを目的に本調査・研究を行ったものである。

II. 調査方法

労働者については、主な調査対象世代を50歳代とし、この世代の問題点を明確にするため40歳代についても同数を対象として調査することとした。
調査は、県内の労働者規模50名以上の事業場から調査対象を選定し、そこで働く50及び40歳代労働者の中から、規模別に設定した数の労働者をそれぞれ同数ずつ事業場が抽出して調査対象とする方法により実施した。調査方式は調査票の郵送によるアンケート方式で1,276事業場、労働者13,072名を対象に実施した。回答があったのは、437事業場、4,536名で回答率は事業場34.2%、労働者34.7%であった。 なお、労働者の調査については、プライバシーが確保できるよう配慮した。

III. 労働者調査

回答のあった労働者のうち、50歳代は52.7%、40歳代は48.9%、男性は74.6%、女性は25.4%であった。調査はGHQ30を含め53項目について実施した。

1. 職業生活での不安、悩み、ストレス
仕事や職業生活での強い不安、悩み、ストレスの有無及びその内容別労働者割合は下表のとおりである。職業生活での強い不安等があるとした場合の内容別割合を見ると、40歳代では仕事の質が1位で、特に男性管理職で顕著であるが、女性では職場の人間関係が1位となっている。50歳代では、特に女性において顕著であるが、男女とも職場の人間関係が1位となっている。 このため、熟年労働者の職業生活での強い不安等を軽減するためには、仕事への適性への配慮も重要であるが、職場における円滑な人間関係の構築のための管理者教育等の方策が最優先される必要があろう。 さらに、50歳代では、71.1%が定年後も働きたいと答え、また、半数が仕事の質・量に変化がなければ今の仕事を続ける自信があるとしていることから、定年後の再就職のための準備といった配慮も必要と考えられる。

2. GHQ30
GHQ30では、総得点が7点以上で何らかの問題が認められるとされるものが、男性の46.3%、女性の48.9%を占めている。また、要素スケールの希死念慮・うつ傾向については、40歳代の非管理職が高く、自殺を考えたことがあると答えたものも同様である。さらに、希死念慮で中程度以上の問題ありとされるものの割合をみると、40歳代非管理職女性が最も高く16.0%次いで同男性15.8%、50歳代管理職女性15.3%の順となっている。

IV. 事業場調査

労働者規模50人以上の事業場における産業医選任率は72.5%であるが、従業員から直接相談を受ける対応者を、先ず相談に対応する第一段階対応者、それを受けて対応する第二段階対応者に分けてみると、第一段階では直属の上司が69.4%とトップで、産業医は16.5%である。第二段階では、上司が48.2%、産業医は27.1%と増加している。一方、精神的問題を持つ従業員が発見された場合には、産業医を選任している事業場では67.6%が産業医に相談を行っており、産業医のメンタルヘルス面での研鑚支援を考える必要がある。熟年労働者のメンタルヘルスに着目した対策を行っているのは23.3%、今後、同対策の実施を考えているのも23.3%である。
メンタルヘルスに関する要望として最も多いのは、どのような専門家がいるかの情報、次いで管理職・従業員に対する教育、事業場でのメンタルヘルス対策の指導の順で、メンタルヘルスに関するセンターへの要望と全く一致している。

V. まとめと考察

職業生活に関して6割を超える労働者が強い不安、悩み、ストレスがあると答えている。さらには、GHQ30においても問題ありとされる労働者が多く認められる。その一方で1/3を超える労働者が困ったときの相談者・支援者がいないと答えている。これに対し、事業場で相談できる仕組みを持っているのは全体の58.4%で4割以上の事業場では仕組みがない。特に、事業場規模が小さいほど仕組みのない割合が高い。
これらのことから、事業場における相談制度の確立や相談対応者の育成などにより、労働者が気軽に相談できる仕組みづくりが必要と考える。また、全般的には40歳代の方がメンタル面での問題が多いものの、50歳代においても大差ない状況にあり、熟年労働者のメンタルヘルスに着目した対策についても一層充実が望まれる。センターとして、それら課題を解決するための支援方策等について検討する必要があろう。さらに、センターへの要望を受け、今後、地域専門機関とのネットワークづくりを指向する必要があろう。

産業保健情報

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